盲導犬が届ける命の食料
子ども食堂への食料支援活動も展開
東京都西東京市田無町にある小さな鍼灸治療院「がく鍼灸治療院」が、2023年より地域の子ども食堂を支援する社会活動を続けています。
活動内容は、家庭で余った食料品の寄付を呼びかけ、地域の子ども食堂へ提供するというもの。
集めているのは、缶詰、飲料、レトルト食品、瓶詰、乾物類、お米、麺類、調味料などの未開封かつ賞味期限内の保存食品です。患者や地域の住民からの寄付を募り、定期的に市役所を通じて地元の子ども食堂へ届けています。
「ほんの少しの余りものでも、必要としている人に届けば大きな力になる」と語るのは、治療院代表の山本学さん。
施術だけでなく、地域福祉にも貢献したいとの思いからこの活動を始めました。
山本さんの地道で優しい気持ちは、子どもたちの笑顔を支えていることでしょう。
刺繍バッグを通じて、盲導犬への理解を広げたい
一方で山本さんは今、もうひとつの社会課題にも目を向けはじめました。
それは、盲導犬ユーザーへの受け入れ拒否の問題です。
日本盲導犬協会が2024年3月に発表した調査によると、全国の盲導犬ユーザー576人のうち、約48%(276人)が、飲食店・宿泊施設・交通機関などで受け入れを拒否された経験があると回答。2020年の52%からは改善されたものの、依然として深刻な状況が続いています。
「日常生活の中で盲導犬に出会う機会はほとんどない。だからこそ、患者さんの目に触れる場所で、盲導犬のことを知ってもらいたい」と、山本さんは盲導犬を刺繍したカゴバッグの展示することに賛同してくれました。
カゴバッグは、タイ南部で250年以上続く伝統の手仕事――「クラジュード」と呼ばれる天然素材を使った手編み・草木染め・手刺繍――によって作られています。
盲導犬をテーマにした刺繍は、単なる装飾ではなく、働く犬たちへのリスペクトを込めたものです。
「かわいいという気持ちをきっかけに、盲導犬について少しでも知ってもらえたら。どんな訓練を経て盲導犬になるのか、ユーザーと過ごす日々、なぜ今も入店拒否が起きてしまうのか――。専門家の声も交えながら、わかりやすく伝えたい」と山本さんは語ります。
「知る」「考える」「話す」きっかけの場に
治療を受けに来た患者さんが、何気なくバッグに目を留めて、「あれ?これは何の犬ですか?」「タイの人たちが、手で刺繍してるんですよ」――「ゴールデンレトリーバーという種類で、盲導犬なんですよ」
そんな一言から、「知る」「考える」「話す」きっかけが生まれることを、山本さんは願っています。
今年度の**フード・ドライブ(食料提供活動)**は、6月2日からスタート。
「まずは、刺繍バッグに入りきらないほどの食糧が集まるのが目標です」と、山本さんは真剣な眼差しで語ります。
盲導犬を受け入れる、静かな空間
「当院には盲導犬専用の設備があるわけではありません。でも、玄関近くに盲導犬が静かに横たわって過ごせるスペースがあります。完全予約制のため、他の患者さんと重なることもほとんどなく、落ち着いた環境でご来院いただけます。」
山本さんは、「大きなことはできないけれど、自分たちにできることを少しずつ」と語ります。その姿勢は、盲導犬支援にも、子ども食堂へのフードドライブにも共通しています。
がく鍼灸治療院は、医療の現場でありながら、社会とつながる小さな拠点として、今日も地域とともに歩み続けています。
※お越しの際は、地元のランドマーク「シチズンビル」を目印にどうぞ。世界に誇る日本の時計メーカーのすぐ近くです。
〈筆者より〉
この記事は、がく鍼灸治療院代表・山本学氏を取材し、当社が執筆したものです。
当社は、2015年の国連決議(SDGsの17の目標)に沿い、タイの手仕事を日本に紹介しながら、社会課題の解決に取り組んでいます。




